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Making of CAR GRAPHIC

写真

2011.06.04

シトロエンDS4/DS3レーシング取材日記

7月号の第2特集はシトロエンDSです。
内容は、

1)DS4独占試乗(日本市場として)
2)DS3レーシング試乗
3)シトロエン・レーシング訪問
4)DS4デザイナー・インタビュー
5)モデル戦略統括責任者インタビュー
6)シトロエンM35

ちなみに過去のDSに関係する記事がないのは、シトロエン自身が
「新しいDSは過去の“再開”ではなく、新しいモデルだ」
と盛んに主張していたからで(いまは少しその論調は緩んでいますが)、
確かにDS3のような小型車もあるわけですから、
分けて捉えた方が現代のDSを理解しやすいと考えました。

今日はこの取材の裏側を、日記のように気楽な感覚で綴ってみたいと思います。

実は提示されたDS4の試乗は、バルセロナにて5月17日という日程でした。
帰路にパリにてDS3レーシングに試乗して帰国すると20日。
6月1日発売号に掲載するには、若干無謀の薫りが漂うナイスなスケジュール。
しかし「試乗しに行くのはCGだけ」という魅惑的な情報に、
ぜひとも行きましょう、いや、行かせて下さい!と即決したのでありました。
「乗れるものはなんでも乗る」
「聞ける話はなんでも聞く」
「行けるところはどこでも行く」
が、カーグラフィック魂なのでありますから。

スペイン到着後、日本時間朝3時くらいから始まった、
フランスメーカーらしいお洒落な技術説明会。
睡魔と戦いながらメモを取る。
帰国後でも解読可能であることを信じて、暗い間接照明の中で書きなぐる。
(凄い会場だなあ、何人入ってるんだろう)
と思ったら左右は鏡で、実態は意外とこぢんまりでした。
それでも様々な国から来た記者たちが数十人。

説明会が終って、地中海の月を前に惚けていたら、
チュニジアから来たという記者たちから話しかけられた。
「日本人ですか。人々の心は少しずつ回復していますか。状況は改善していますか」
筆者は東京で、少しばかり右往左往しただけです。
被災地の方々に、彼らの心遣いを届けたい。

次の日「太陽が昇りきらないうちに撮影を始めたい」
というカメラマンの希望で早朝から出動する。
まだ係が車を並べている最中だったが、まあ奇麗に並べること!
この、試乗車をきれいに整列させることは、どのメーカーでも見かけることですが、
いつもながら定規を当てて並べたようで驚く。

DS4試乗記事のタイトル写真を撮るフーロン氏。
「ダーク系のボディーカラーは難しいねえ。」と言いつつ歩き回って“光”を探す。

その後150km程度走り回って車の乗り換えポイントに到着し、
しばしの作戦会議をして戻ると、またもやDS4はビシっと整列していた。
「今度は白い方の車?明るい色の方が撮影はしやすいけど、
 こんな晴天下の白は抑揚を出すのが難しいよねえ、う〜ん」
頑張れステファン・フーロン!

バルセロナ近くのモンセラットという山にて。
遠くから見るとまるで地面から巨大な鶏のトサカが生えているような奇妙な山で、
「あそこ行ってみよう!」となりました。
人っ子ひとりおらず風の音しかしない中で撮影していたら、
突如、小学生の集団が駆け下りて来て驚いた。
遠足らしいのだが…。どこから来たの?

DS4もC3のようにフロントウィンドーが非常に広い(C3ほどではありませんが)。
頭上に迫る岩山もしっかりと見えて、ドライブが面白い。

「俯瞰で撮りたいんだよね」と山を登って構えるフーロン氏(左下に居ます)。
このあとは延々と九十九折を下ってバルセロナに戻りました。
道中は、日本人的には絶景のカントリーロードだったのに、
フランス人的には「ずっと同じ景色だなあ。面白くない」となるそうで、
ほとんど撮影しませんでした。こういう感覚の違いは興味深いです。

街では偶然、EVのテスラ・ロードスターが“普通に”停まっているのに出くわしました。
撮影やモーターショーを別にすれば、
個人的にはこうして町を走っている姿は初めて見ました。

パリに移動し、今度はDS3レーシングです。
あのパリから少ししか離れていないのに、こんな静かな場所があるとは。

「ああ湿気もない、涼しい、やっぱりパリ最高」とステファンはうれしそう。
バルセロナではスペインのシーフードと生ハムがどれほど絶品かということを、
熱く語りまくっていたくせに。
彼はバルセロナ・オリンピックのときに撮影隊として2ヶ月ほど滞在したそうで、
毎日、疲れきった後の夕食をこの上なく楽しみにしていたとか。
当時彼が泊まっていたホテルは、6階の部屋なのにエレベーターもエアコンもなく、
そこを重たい機材を抱えて上り下りすることに始まって、
全体的には厳しい仕事だったようですが、食事に関しては最高の思い出らしい。

ヴェルサイユにあるシトロエン・レーシングも訪問しました。
これは駐車場の許可証で、ルーフに磁石でくっ付ける方式です。
この後すぐ、少し外出してまた戻ったのですが、すると係のオジサンが、
「おお!前回は2位に甘んじましたが、今回はポールポジションです!」
と冗談を言いながら、「1番スロット」の許可証をポコンと付けてくれました。
セバスチャン・ローブにDS3レーシングの感想も聞けましたし、
終始楽しい訪問でした。

その後は急いでパリのシトロエン本社に戻り、
DSの戦略やそれぞれの特徴についてインタビューをさせてもらいました。
率直に話して下さる方だったので、興味深いひとときでした。
その後は撮り残していたDS3レーシングのディテール撮影をこなし、
1日のスケジュールが終了。
実はDS3レーシングのディテール写真は、
シトロエン本社の地下駐車場を出てわずか5m進んだ場所で撮っています。
いわゆる敷地内通路です。
こんな近くに撮れる場所があってよかった……というのは、この時点で、
朝4時半集合でバルセロナを出発してから約13時間が経過していたからで、
フーロンさんは「ネバーエンディング・デイだ…」と心が折れかかっていました。

こうして終わった取材のあと、筆者は4日後に迫っていた締切りに間に合わせるべく、
その日の宿でも空港でも飛行機でも、ひたすら書き続けました。
フーロン氏も撮影からわずか12時間後に全写真を納品してくれました。
この奮闘の結果は7月号に掲載しております。ぜひ!

photo :編集部
カメラ:オリンパスXZ-1

(CGテストグループ)

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